第43章 月は綺麗ですか…江戸川乱歩誕生日10月21日記念
「血液も一瞬で茹るような……どろどろの愛とか
沸騰するくらい高揚する興味とか
まだまだ尽きないけど……」
慣れているくせに、と口から衝いて出てきそうな言葉を飲み込む。
こちらを見上げる彼女の黒瞳が不安そうに歪んでいた。
確かにそこには光がないけど、それにさえぞくりと僕の中の何かを一心に掻き立てる。
濡れた瞳は何かを期待しているようで払拭する何かを渇望している。
ああ、だめ、駄目、背筋に走った加虐は止まらない。
「乱歩……その。
そんなに見られると…流石の妾にも恥じらいくらいはあるのだが……」
どこか気まずそうに苦笑する真綿に、余裕はあるように見える。
でも本当かな?
「もっと恥ずかしいことしちゃうのに?」
「な、行為自体を恥じらっているのではない––––
何というか、食事中に相手に見られながら気持ち良く食せるかという問題さね」
ふぅん……ま、確かに、判らなくもない…かな?
「成る程、つまり真綿にとって性行為は食事ってこと?」
「文脈を捻じ曲げているのはどっちかや!?」
反駁する彼女の両手首を捕らえ、片手で纏め上げる。
きっといつもの君なら、これくらいどうって事ないくらい振り解くのは秒なんだろうけど……
振り解かないってことは、もういいんだよね?
「あ……!」
しゅるしゅると空いた片手で紐を解き袴を降ろす。
真綿が一瞬だけ目を見開いた。
和服って大概一枚の布から出来てるから、脱ぎ着楽なんだよね。
薄暗い室内では、ほのかに光を帯びてさえもみえる。
空気に晒された、綺麗で真っ白い内腿に口付けた。
「………っ」
「ふぅん?」
声を噛み殺しているっぽい?
じゃあ……
「っぁう…!」
臀部まで舐め上げるとついに身をビクつかせる。
「我慢しなくて良いのに。
辛くない?辛いでしょ?
まあ、君の自由だけどね?」
はあ、と真綿が絞り出すように息を吐いたのも聞き逃さなかった。