• テキストサイズ

威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第43章 月は綺麗ですか…江戸川乱歩誕生日10月21日記念







「君の不安を払拭してあげようか」

「どうやって?」


ふふん、と乱歩は自信ありげに笑った。
その腕に抱いた真綿を、そのまま背後の部屋へと連れ込む。


後ろ手に襖を開け、そして肩を抱いてくるりと位置を変え、そして。


––––トンと襖を閉めた。




その音がやけに大きく響いた気がする。




「……乱歩、一応問うが、こういうのを世間では何と言うか知っておられるか」


「ん?

……んー、既成事実?」


「ばれたら不味いのに既成するのかや!?」


真綿が割と本気で反駁した。




「何で不味いの?」

「信頼は無くとも信用を無くす故…」


ほら……

真綿はもう大丈夫。

信頼されたがっている。
信用されたがっている。

家族になろうとしてくれている。



何度も思い返して引っ込めた手を

こちらに伸ばしてくれている今がチャンス。



「何だ、そんなこと。大丈夫だよ。
福沢さんは僕には甘いから!」

「さっき平手打ちどうこう宣うていたのは何処の誰かや!?」

「あの瞬間から甘くなったはずなの!」



はずなのって…と真綿がぼやく。

年の割には子ども同然の聞き分けの悪い成人だ、と真綿が笑った。




「いいから。
君がどう思っていたのか、ようやく判ったよ。

君を養ってくれている福沢さんに何を返せばいいのか判らないでいる。
その困惑と並行して、見限られることの不安もある。


それをいっぺんに拭い取るには……」


眉をひそめてこちらを見る真綿の瞳に、悪いとは思いつつも好奇心が募る。
背中に走った確かな興味。



「福沢さんが手塩に掛けて大事にしている僕と仲良くなること……じゃない?」

「自分で手塩に掛けるとか言うのか」

「そういう人間だけど?僕」



彼女の黒瞳に翡翠色が映り込む。





/ 686ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp