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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第43章 月は綺麗ですか…江戸川乱歩誕生日10月21日記念







「願いが、叶うのなら……」



僕はね



「わたし、は」


真綿という、過去の君とはなんの関係もない君を見ていたいんだ。



なんて、さっき誰が話をほじくり返したの?…ってね。


真綿が少しだけ眉を寄せて、
呟くように、聞き逃してしまいそうな声と共に唇を震わせた。


「福沢殿に、ずっと共に在ると誓った」

「うん」

「だから、福沢殿が目に掛けている乱歩も庇護対象だった」

「うん」


真綿の手を掴む、から繋ぐ、に変えて
なるべく優しく抱き寄せた華奢な身体に腕を回した。

僕の腕の中で一度息を吐く真綿は、されるがままになっている。




「でも、妾には一つ心残りがあった」

「それが、どこか僕たちと隔絶していたことに繋がるなら、聞かない理由はないね」


ぎゅっと腕に力を込めれば、真綿の体温が伝わってくる。

じわじわと、人肌で。




「妾は殉職……というか、戦死扱いとになっているが…
元のあるじ殿にはっきり別れを告げたわけでもなし。

猫や鳥は死体を見せないと言うが、妾に至ってみれば死んですらいない。

だから、もし……」




乱歩の肩口に真綿の体温が浸透するようだった。

息が近い。


とん、と肩に掛かった真綿の頭を撫でた。



「まだ、元のあるじ殿に仕事があると言われたら……」

「従うしかないと。」


真綿は頷かない。

背に回した手が、そのまま真綿の背を軽く叩く。



「うん、成る程成る程。よぉく判ったよ。

つまり君は、まだ向こうの将に別れを言えた訳ではなくて、だから間者になり得るのではないのかと」


乱歩が頷き、真綿の背を撫でる。


真綿の手は相変わらず乱歩を抱くでもなく、ただただそこにあっただけだった。






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