第43章 月は綺麗ですか…江戸川乱歩誕生日10月21日記念
「じゃあ、ここは踏み込んで聞こうかな。
何がそんなに不安なの?
ねえ?真綿」
その手を引く。
ふわり、後方に舞う黒髪が
ちらりと白熱灯に晒されて煌めいた。
「……不安?」
「そうじゃないの?」
くっと笑う真綿の笑みは
どうしようもなく
「妾に、不安など」
僕と似ている
「だって、君の手は血に染まりきっている」
福沢さんと出会う前の
「福沢さんがいつか見限るのではないかと、
どこかで諦めているはずだよ」
救いなど信じていない瞳
「もし一つ願いが叶うのなら……何を願うつもり?」
手を取ることに諦観を抱いた指先も
僕は、僕なら、知っているから
判ってあげられるから
だって君は、昔の僕と似ているんだ。