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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第43章 月は綺麗ですか…江戸川乱歩誕生日10月21日記念






「憎くないの?

自分もろとも巻き込んで無理心中したあの時の相手とか、勝手に君の未来を決めた僕とか。

そりゃ顔に出して超絶不満タラタラ、いつでもこの首狙ってるとかそんな事言うわけじゃないけど……」


くどい、と真綿が言う。
そこに笑みはない。

本気で言っているようだった。




垣根と同じくらいの高さの竹垣門をくぐって、福沢邸の敷地外へ出た。




あーあ……これ絶対あとで福沢さんにすっごく叱られるやつだよね。

だって勝手に連れ出して、外に出しちゃったんだから。
福沢さんは、てっきり僕も彼女も家の中にいると思っているのだし。




「憎くなどない。

ほんの少しだけ、憎悪と呼べるものはかつてあったかもしれない。
ただ……」


真綿が雪空を見上げた。

ちらちら、降る粉雪はその黒く澱む双眸に映り込み、やがて長い黒髪に不時着する。




「ああなったのは自分に落ち度、至らなさがあったからで……
それを省みる方が……神経使うさなぁ」

自分の至らなさや失敗を反芻させるのは心にくる。




「あれは自分が悪かったと?」



「そうは言うまい。

尤も、妾が言えた身ではないが……
この妾と出会した時点で、彼奴は逃走するべきだった。」


前方から来た車が雪をまき散らすもので、真綿に腕を引っ張られた。




「わわわ」

「危ない。
妾のあるじは福沢殿だが、乱歩を守らないという事ではない」


希代の名探偵である僕は人目を引くし、
何でだろう、やっぱりどこかで恨み嫉み妬みを買っちゃうものなんだ。




「知らず知らないのうちに人から恨まれ、
計画的に貶められる事の何て哀れな事か」



その目は僕を見ていない。


僕を介して、ほかの誰かを見つめている。





「僕は、解決したからこそ生まれた妬みとか、恨みとかを……
信じられないと思うけど、僕自身は恨んでないよ。」


綺麗事に聞こえるかもだけどね?



だって君はあの時の事はすべて天命なんだって

在るべくして在り、為るべくして為ったって言ったんだから。





横断歩道には、子どもと両親。

遅い正月を祝うのかもしれない。




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