第6章 花園紳士
不名誉な事を記録されそうだった。
まあ、そのくらいで真綿の気が治るのなら、いくらでも付き合うが。
うん、まあ、ただ ちょっとだけ痛いかな。
「……ねえ? 真綿」
「うん?」
彼が影のない微笑を浮かべた。
「…病室って、何もなくて、詰まらないものだね」
「無茶言うなよ…、貴様にはその怪我を治してもらわねばならない」
「えー?なんで?」
穏やかな蒼穹の下。
包帯まみれの大怪我をした花園の紳士と
白の着物を着た暗殺者。
確かに、この風景を切り取れば
夢の中だと本気で錯覚してしまいそうなほどに
この楽園は穏やかさに満ちていた。
「近々、由紀の異能を使う動きがみられる」
「……えー…」
ほんの一瞬だけ、真綿の言葉に
『由紀』の顔から、その笑みが消え失せた。
が、すぐに真綿がいたと気付き、笑みを戻す。
「…いや、別に由紀が笑いたくなければ、笑わずとも良い」
「…うん?
あははっ、やだなぁ。
ううん、そんなんじゃないよ、そうだね
真綿にだけは、僕は僕のままでいられる」
彼のその大怪我は、真綿の脳を冒したことで得た怪我。
それ程までに強力な異能なら、精神操作系の異能なのだろう…
まるで百合の花のように たおやかで、紳士である彼の名は
"三島由紀夫"。
ポートマフィア所属
怪我で療養中であった五大幹部の
一隅である。