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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第42章 倒錯……V






「––––……」


はぁ、はぁ、と荒い息遣いが僅かに聞こえてくる。


思った以上に男は健脚で、後から追いかけ回す真冬が
どこを曲がりどこを渡ったのかを記憶しながら走る。



前を走る男は肩で息をしながら玉のように汗をかき、それでも猛スピードで逃げてゆく。
対照的に真冬は汗すらかいておらず、道をショートカットしながら確実に距離を詰めていた。




「糞ッ、あんたも陸上とかやってたのかよ……!」

「ほう?」

真冬が走りながらぱたぱたと懐を探り、それから小袖の中から糸を引き出した。




「成る程、陸上競技で体育大から確約を得ていたものの、私立は高くて金子が足りないゆえの行動か」


では、拳銃の出どころは?




「銃を持っていると通報があったが」


「へ、へへへ、坂島はなぁ、なんだって……っ、はぁ…願いが、はぁっ、叶うん…だよ!

あんたの推理は一つ違ぇ、俺はなぁ、はあっ…はぁ、
今の…大学を辞めて、体育大に行くンだよ…!」


真冬は端的な質問ばかりを投げつけるが、答えるほうの男は走りながらだ。

息を切らしながら答えて来た。




「ふむん、つまり採用か選手か、と言ったところか。」

今よりもっと出世すると言うのに……馬鹿な事を…





「……」

ちらりと電柱に貼り付けられたチラシを適当に見やると、七宝町と書かれていた。

この辺りならば軍警察署が近いか。




そろそろ大通りに辿り着く、そう気付いた真冬が最後に問いを投げかけた。




「貴様が辞めると言っている大学は、

この辺りの…向こうの方にある、心理系に長けた大学かや」




そう、今まさに、晶と治が調査してくれている場所だった。






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