第42章 倒錯……V
「だとしたら、どこかの時点で『特定のモノ』に出会えた自分と、
出会えなかった自分が出来る」
「嗚呼、そうさな」
確か、こんな問題があった。
Aは正直者。嘘は絶対に言わない。
Bは嘘つき。その言葉に嘘しかない。
ただ、AもBも瓜二つ……というより、二人が同じ人間だったとして、どちらがどっちなのかを知りたい。
「同じ人間だったとして」
真冬が目を細めた。
「……しかし、そうしたらひとりの人間が分岐する事になってしまうが」
「んむ。
仮にひとりから割れたのをAとBだとして、AもBも間違いなく自分だ。
触媒と出会えたAも、出会えなかったBも、外見は何一つ変わらない」
「中身は違うと?」
国木田の言葉に
「『虚実は反転する』……」
真冬がぽつりと呟いた。
全てが逆さまになるというのなら、元から逆さまだった存在はまた反転する。
……知る由も無い事だが、もし。
もしも菜穂子のいうあの娘がこの場に居たとしたら、きっと……
なぜ自分が此度の任務から外されたのかをこの会話で理解出来だ事だろう。
三島がなぜ、その彼女をこの『坂島』に近付けないようにしていたのかを。