• テキストサイズ

威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第42章 倒錯……V





「独歩––––」


今度は真冬の声で振り向いた。


彼の手には古びた書物が数冊抱えられている。




「独歩の考えで良いのだが……」

坂島の郷土資料館、とてつもなく地方歴史書しかない建物に2人はいた。

脚立に立って高い棚から一冊、赤いファイルの書類を真冬が手に取り捲る。



「……」

「真冬、 どうした?」

「切った」


真冬の声も顔も仕草も、何一つ変わらないが、自分たちの付き合いの長さをなめてはいけない。

指先から血液が溢れる前に、切ってない方の手で手元の資料を国木田に渡す。

書物を汚したら大変だ。




「話の続きだけれど……異能と使い手が融合する事は可能だと思うか?」


「あり得んだろう。
形而上、異能力そのものという事ではないか。

太宰のような者が触れれば消える存在など、ただの化生だ」


真冬は切った指先を国木田に見せた。

血が滴る前に真冬によって拭いとられる。




「だが見方を考えれば、ある程度は。
例えば自分は異能生命体ではないが、自分そっくりに作れる、とかな」

「妾は一人、そういう者にお仕えしていた時があってな……」

ほうと国木田が目を向ける。




「其の者は、ある道具を媒介に自我を宿すという使い手だった」

かつて仕えていた森殿のそばにいたエリス嬢も類に漏れず。


「ふむん……とある特定のモノや人がこの世にいれば、異能力で奇跡を起こせる」

「……つまり?」


古書堂のような資料館は薄暗く、廃れ、人が頻繁に訪れるような場所ではない。
こういうところには大抵ヒントアイテムが眠っているものだ。



「あの娘の存在は……とても、何というか…異物地味ている。

獣は人間の言葉を発せない……
が、獣自体は人間の言葉を理解している」


真冬がふと国木田の目を見遣る。


琥珀色の双眸は誰の話だ、と問うている。





「なら、考え方を変えようか。


もしも……自分が元から異能生命体だったとする。


どこかの時点で『触媒となるとある特定のモノ』に出会い、自分は人間を模した存在になれた。

そうだとしたら?」

例えば血液とかは、触媒としてオーソドックスなものだろう。



ばたんと厚い本を閉じる。

埃が舞った。




/ 686ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp