第42章 倒錯……V
「2人に?」
「そう。2人に」
乱歩が太宰の袖から手を放す。
翡翠の双眸は推し量るように細められたままだ。
「もともとあの2人は無駄も無ければ粗相も粗忽も目立つものはない。
仕事を迅速に終わらせるには、こと息の合った二人組なんだし」
「てっきり、乱歩さんと組んでいるものだと思っていました」
太宰の言葉に違うよと乱歩が適当な方向を向く。
「確かに真冬は家族だし、いつも一緒に居てくれる。
でも真冬は元々……」
暗殺者だった。
この言葉は、事実は太宰には言えない。
ふと回顧するように乱歩が口を閉ざし、与謝野女医も「ああ、まあね」とだけ言った。
与謝野女医は真冬の過去の素性を知らないが……
『普通の人間』ではないことくらい察しているだろう。
対象の因果を押さえつける。
社長に頼めば極秘資料に、その名と授かった冠位、そして書き連ねられた悪名の数々、所業の数々が出てくる。だろう。
無理に知ろうとは思わない。
でも真冬は普通の者ではない。
「元々?」
「……ううん。
国木田の胃痛軽減のためにもね。
だからこうして、あの2人も久々に2人きりの時間を過ごせるんだし……
たまにはね」
乱歩は話を曖昧に切り上げてから、机から立った。(可笑しな点を述べよ。)
「机に座るものじゃないですよ」