第41章 慟哭……IV
……夢、だったと思う。
寒い。
痛い。
怒鳴り声が聞こえてくる。
雨の降る音に泣き声は敢え無く掻き消される。
怒鳴り声が聞こえてくる。
自分に向けたものではなさそうだが、そこに自分が関わっているのは判っていた。
怒鳴り声かと思った。
『––––ッつ––! ぅ、あぁ…!』
泣き声だ。
私と同じように、雨にかき消えるほどに押し殺された小さな嗚咽。
ごめんなさい。
私は言う。
ごめんなさい。
私は叫ぶ。
掻き毟った髪は、綺麗に切りそろえられていたのに今はびしょ濡れな上に汚れていた。
じゃり、と手が汚れるのも構わずに地面に膝をついた私は手を握りしめる。
砂が爪の間に入って爪が傷んでも、私は介さなかった。
大雨で泥が跳ねて、水たまりを濁らせる。
「っ、め、ごめ……っ、な、さ…ッ…!」
いくら謝っても、もう後の祭りだった。
全ては終わった瞬間に後悔する。
憎い。
嗚呼……憎い
憎い。
憎い、憎い、憎い、行き場のない後悔、悔恨、憎悪、執念、それより何より、圧倒的憎悪。
憎い憎い憎い憎い憎憎憎––––!
夢なら良いと、何度叫んだだろう。
痛い。
寒い。
どうすれば良いのだろう。
これは、こんなのは、『いつの』わたし?
憎。
憎憎。
人間が憎い。
……嗚呼、卑しい。
なんて醜いの。
私は、こんなにも汚らしい。
人は永遠に太陽に浄化されることはない。
私が太陽を噛み砕いてしまったから。