第1章 荘厳にして、可憐
私に押し倒されても尚、慌てる素ぶりのない真綿。
「抵抗しないなら、このまま奪う」
「ふ、面白い」
真綿が くっと笑った。
「やってみるが良い。」
真綿の、あの男の血に染まった花嫁衣装を
しっかりと見納めてから
躊躇なく、ゆっくりと、剥いでゆく。
手荒に破くなんて、やっぱり、ダメだった。
出来なかった。
「綺麗…」
私のそんな言葉に、真綿が意地悪げに笑った。
「治は、この姿が美しいと思うのかや」
「思うよ」
どんな格好をしていたとしても、君は、等しく美しい。
先ほど真綿が 私に言ってくれた言葉だ…
人の言葉に絶望するように
時に人は、人の言葉に救われることもある。
どうしようもなく。
「抱きたい」
私は、私を偽らずに
真綿の耳元で、囁いた。
ん、と擽ったそうに顔をわずかに背ける真綿。
表情が変わらないのがいい。
その白い腹を
指先でひと撫でしてから、ゆっくりとその唇の熱をを奪った。