第41章 慟哭……IV
「––––……」
中也が、扉の向こうで未だ動かない菜穂子を思ってか、ちっと舌打ちしてから
無機質な目線を向けてくる三島の手首を掴み取る。
その、ほんの一瞬。
「…………?」
三島の瞳に、諦観にも似た何かが過ぎった。
何だ、今のは。
どうにもならなかった諦め。
真実を知ったことへの興ざめ。
それから、これは…………
「菜穂子」
「ここに」
扉の向こうからは、冷静な声が聞こえてくる。
嗚呼、そうだな。
およそ3年前の手前ェとは見間違えるほどだ。
「先に三島の温室の寝所を乾燥機か何かで温めておけ。
俺がこいつを運ぶ。
今のこいつに、女は劇薬だ。」
「––––は。では失礼致します。」
菜穂子は公私混同をわきまえる。
けど……
三島のようにいつか『堕ち』そうでそれが少し怖かった。
感情の起伏の乏しい菜穂子は、三島には多彩な貌を見せていると聞く。
菜穂子に三島は必要で、
三島も菜穂子を時折目で追っている……
ような気が、しなくも…ない?ような……?
…………まァ、兎に角。
(さっきのは……一体、何だったンだ……?)
あの紺色のガラス玉に映ったあの情とも言えるべき強い後悔。
あれは、菜穂子に関してなんだろうけど……
ぶつんとスイッチの切られた絡繰人形のように
ふっと意識を落とした三島が、俺の方へと舞い込んできた。