第41章 慟哭……IV
「……夢なら夢で早く終わらせよう」
パッと三島が手を振ると、その軌跡を追って描かれた線状に花びらが舞い散る。
……無理をして、急いて成長しようとしなくても良いのに。
万年の永遠がすぐそこにある僕にしてみれば
上橋はまるで春霞のように呆気なく存在を変化させる。
同時にそれが示すものは、
(この『僕』が置いていかれること……か)
この僕が何の僕なのかという確固たる記憶は、頑張って探せばこの夢の中のどこかにあるのだろう。
放置されて、この前データとしてダストボックスに捨てられた感情みたいに、どこかで花びらと一緒に浮遊しているのかもしれない。
「––––……」
夢を見ていた。
鮮やかなものとは違う。
色褪せる数年前の夢。
そこに見慣れた明るい髪の子がいる。
中也かもしれない。
数年前の夢とはいえ、いつの夢なのか。
……あれ、あの子は太宰かな。
ふわふわ、赤い花びらが何となく夢を邪魔してくる。
……あの人は、僕にとって大切な人、森さん。
その隣に……いるのは……あの彼女。
ということは、3、4年前かな。
頭が痛い……
何だろう。
夢は終盤に入る。
終盤とはいえ、何が終わりなのかは僕には理解出来ないけれど。
「というか––––……」
違う。
この夢は、織田作と安吾が出てこなかった。
つまり、3年前より近未来の夢の続き。
「……上橋、は?」
いないのだ。
いなかったのだ。
まるで元から出会っていないみたいに。
皆の雰囲気からも感じ取れない。
「待って……これ、いつの、どこの夢……?」
ザザッと夢にもうここまでだ、とでも言うようにノイズが走る。
もしも……
僕がこの前夢の中で出会った彼女に問われたように
『僕たちに出会わなかった』上橋が
この夢にいるのだとしたら。