第41章 慟哭……IV
––––…………。
夢を見ていた。
そう、見たが最後、覚めることを約束された夢。
脳裏に浮かぶのは、一人の女子の子どもだった。
怯えた鳶色の瞳
きっと手入れをすれば上質になるのであろう暗い色の髪は、オークションで売られる前の主の扱いが悪かったのか乾燥し、不揃いに毛先が切られている。
––––嗚呼、だから自分は。
だから『僕』は
––––『僕はほら、引きこもりだから。
買い物、行ってくれるかい?』
––––『大方、君を養うための日用品だろ。』
怯えた瞳。
小さく震える声。
今となっては全てが夢の跡地。
"知っていたのではないか"とあの人は僕に問うた。
あの人が森さんの私邸暗殺者兼執事役の事。
あの人と織田作がどんな末路を迎えるのか。
その後、僕と太宰と中也がどうなるのか。
そして……上橋菜穂子と––––
「私は、三島幹部のことを愛しています」
嗚呼…………うん。
強くなったね、と言わねばならない。
見えないゴールを目指してここまで生きてきた君は……
3年前、太宰からの冷遇だのトラウマだのでろくに声も出せなかった君と大きく見間違えるほどになった。
己の手から溢れ落ちるものを守りたいと言っていた。
僕はどうなのだろう。
どう、とは?
どうしたいのだろう?
ろくに自我も感情も感傷も持たずに
取り敢えず何とかうまくやり通す僕は、僕は……
一体、誰だった?ん、だっけ……?