第41章 慟哭……IV
「だめ」
木製の扉の奥からそう言われて
把手に伸ばした指がびくりと震えた。
中原幹部もきっと中にいらっしゃるのだ。
三島幹部と一緒に。
来……に続く言葉はきっと来るなという拒絶。
どうして、どうしてなのでしょう。
単に私に力が無いからと三島幹部は仰った。
それと同じだからなのでしょうか?
それと一緒くたに考えてしまう私は、
まだまだ、弱いのですか?
(なら…もっと……つよく、ならなくては)
そうなれば、きっと
––––『上橋の言う強くって、何の、どういう強さな訳?』
力で捩じ伏せることの強さ?
心がどんな事にも屈しないという強さ?
かつて私にとても冷たい目を向けてきた太宰様の言葉。
……それは、その二つは強さとは違うような気がした。
三島幹部がいなくなってしまった時、
上橋菜穂子には何が残るのかを問われた。
だとしたら、私の強さとは……
「––––幹部」
扉に額を付いて、行けない扉に手を置いた。
「三島幹部は、私に力不足だと仰いました。
ある人に、こう言われたことがあります。
私の追い求める強さとは、何なのか……」
力で何かを捩じ伏せることも
全ての恐怖に立ち向かうことも
この私では出来ないことなのです。
「ですから、強くなりたいと望んだとき…
それは何かと聞かれたら
……私は」
この命は三島幹部に救ってもらったもの。
そのご恩に報いるために必要になるもの。
「私は、この手から溢れ落ちるものを
守れる強さが……ほしかった……」
見つめた手のひらは、血に塗れている。
今までたくさんの命を摘んできた。
この、どうしようもない悪意となった血で
染まりきった私の
こんな手でも必要としてくれるのですか?
「私は、三島幹部を愛しています」