第40章 曖昧……III
「でも、どうするつもり?
病院を一足飛びに調べたッつーことは、異能力者だと勘ぐっていないッてことだろう?
なら、間違ってもこっちがそっちの策略にはまったり、無意識に300人のように消えてたら冗談にならない」
与謝野女医が給湯室でコーヒーを淹れてきて、眠気覚しにがぶ飲みしている。
ブラックコーヒーは胃に悪いが、まあ、効果も抜群だ……
「嗚呼……それなのだ。今回、我々が考慮すべき点は。
相手が異能力者ではないのだとしたら、異能力で対抗するのが得策だが……しかし、精神操作だからな……」
気付いたらここはどこ?という状態を避けたいのであって、
どうしてこうなったのかという過程の言質を取れればいいのであって。
「知り合いに精神操作の異能力者など……。
いたとしても特A級に縛られていて政府は首を縦には振らんだろう。」
つまり、精神を乗っ取られないように、他の精神操作で相殺しておくという手段だわけだが……
「無理さなぁ」
「知り合いに……ねえ」
太宰の頭に思い浮かばないでもなかったが……
あの彼は……否、ないな。
「…………」
ふと真冬の黒瞳が太宰を一瞬だけ見遣ったが、すぐに逸らされた。
「他の事象をまた別の事象で押さえつけておく、という事なら
妾も似たような事は出来るが……妾の最大捕捉人数は一応一人だ。
流石に300人ともなれば、矢張り別の手段を」
済まぬ、と真冬が言ったところへ。
「お早う、皆。
……どうした?」
「お早〜みんな!」
社長と乱歩が出社した。