第40章 曖昧……III
「お早う、真冬、太宰」
武装探偵社と木札が吊るされた木製の扉を開けると、すでに独歩がパソコンを立ち上げていた。
ふと見ると、愛知県の病院が幾つか表示されている。
「お早うだ独歩」
「おはよ〜」
真冬と太宰に限らず探偵社の戦闘員……、調査員と呼ばれる外回りの社員たちの机上にはどっさりプリントが置かれている。
「……なにこれ?」
太宰が一番上のものを摘むと、ぺらり。
ホチキス留めされた十数枚が一度に持ち上がり、その多さに眉を歪める。
「昨日出来るだけ調べたものを皆用に纏めた。」
「うわー社畜」
阿呆か、と独歩が太宰を小突く。
「……よく調べたね、一夜でこの量」
真冬が素直に興味津々といった様子でパラパラ捲る。
団体行動の思考、勿論ハーメルンの笛の逸話も、それからこれは……
「嗚呼、それは」
「ふむん。独歩のパソコンにもあるが……
またぞろ、病院の類か。
そろそろ呪われそうさなぁ……」
「そういうのやめろ!」
先の騒動からの反省もあってか既に地形や地歴は調査済み、といったところだ。
冗談だと笑う真冬たちの後方、医務室から与謝野女医が顔を覗かせる。
「おや、お早う真冬、太宰」
眠たげに欠伸を漏らしながら、持っていたペンを胸ポケットに仕舞い込む。
「お早う、晶」
「お早うございます、与謝野女医」
病院どうのというのなら、ここは本職である与謝野女医に聞くのが一番ではと思ったが、
流石に独歩だって思いつかないわけがない。
「どうしてまた病院なんてモンを……」
愛知県坂島、300人が消えたとされるその町にある、ひときわ大きな病院。
スクロールしていった色々な『科』の、部署にある……
「嗚呼……成る程」
「うわーもうやだやだ、まぁた変な方向に……」