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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第40章 曖昧……III








「刻が停まっている。
時間経過という概念が存在しない。

それはつまり、どの時代にも『在る』と仮定しても良い事だろう?」



「……つまり、由紀、は」




2年前の由紀は、こうなること全て–––––、


獣の少女との出会い、
織田作の死、
とある暗殺者の死、
中也の悔恨、
太宰の謀叛、



その全てを

もう、その時よりも2年前から知っていたのではなかろうか……?





「なら、何故森殿に」


「先に知っている未来なんて、激甘も良いところだよ。

彼は僕にこう言った。『2年先から視ていた君よ、どうか判っている未来だとしても何も言わないでおくれよ』と。」




嗚呼、そうか、由紀は2年前の彼だが、
その時の妾たちにしてみれば目の前の彼は2年後の、全く変わらない時間の中にいる彼だから。


ということは……




「由紀、もしかして、マフィアに入ることも2年先の自分は判っていた?」

「真冬。
君はポートマフィアの幹部ではなくそれはブラフで、本来は森さんの私邸暗殺者なんだってね?」




昔、まだ王国だの皇帝だのいた時代。

彼ら王族は王宮に住んでいて、王宮勤めという宮廷専用の人員がいたそうだよ。




「昔でいう宮廷暗殺者が君なら、僕は宮廷夢見屋。

つまり、君と同じ、幹部というのはただの隠れ蓑に過ぎない仮初めの人員。



僕も君と同じ、森さん一個人の所有物なのさ」







そんなこと初耳だったと笑う。


しかしそこに、いつもの勝手知った仲間への笑みはない。
敵意と興味と、いろいろ混ざったなにか。



由紀も、森殿の個人的な雇われだったのだ。

妾と同じように。




「こんなイフを視た。

太宰と出会っていないイフの君の夢。
僕らと出会っていない上橋の夢。

……嗚呼、その上橋はそもそも【異能力】というもの自体を保持していなかったな。

つまり、上橋が異能者なのは僕らに要因があると見て良い。



僕か、君か、太宰か、中也か、首領か、それともポートマフィアという組織そのものか。

いずれかによって上橋が【異能力】を持つ、という世界に定められた。」







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