• テキストサイズ

威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第40章 曖昧……III






《……という訳で、僕たちもその任務に同行するよ》

「どういう訳でしょう?」


朝になり、隣で珍しく眠っている真冬を横目に
小さな声で乱歩さんの電話に出た。

真冬が目を覚ます前に携帯の振動を押さえたはずだけれど、
さすがに熟睡できない体質だからもう起きちゃうかな。





《人が300人も消えた。
しかも、何の予兆もなく、忽然と。
こんな奇っ怪な事件ほど、興味の掻き立てられる物はない!》


「不謹慎ですよ、乱歩さん」


携帯の向こうから、社長が乱歩さんを呼ぶ声が聞こえて来た。

本来なら、いま隣で目を伏せている真冬も
あの場所にいるんだ。



楽しいのかな?
社長は家だとどんなお人なのかな。

主従ということは、乱歩さんもそれを熟知しているわけで、矢ッ張り彼らの中だけの取り決めとかもあったりして––––––



私の知る真冬は、真冬じゃない。

名前を捨てる前のあの君しか知らないから、今の君を語る彼らが羨ましくて、そして……




「お早う、治」

「……あ、お早う、真冬」

二言断ってから、電話を切った。




「話、聞こえてたのかい?
というか、矢ッ張り起きてたんだよね」

「いきなり眠る環境が変わって眠れるかよ」

くっと笑う真冬。


そうか、昨日私が無理やり腕を引いて来ちゃったから……




「資料を読んだ通り。
昨夜のうちに大体は調べたけれど、矢張り妾も治も途中で寝落ちたな」

「うん。十中八九、そうだと思ったよ」


だって私の手元の資料なんて、途中から象形文字に変わっている。

寝た時間自体はいつもよりだいぶ短いけれど、
こんなにもぐっすり寝たのは久々だった。





「……書き直すか」

「うん。
真冬、手元が狂う前に寝たのは得策だったね。」

「慣れているからね。
乱歩に連れ回されるだなんてしょっちゅうだ」


彼の報告書を書いているのはきっと真冬で、
乱歩さんも真冬を信頼しているから共に連れ歩くのであって、矢ッ張り……




「真冬」

「ふむん?」


君の隣は譲れない。






「何でもない……」





/ 686ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp