第40章 曖昧……III
真冬を待っていたのだという言葉を脳内で反芻して、私はなんて世迷言を言ったのだろうと目を伏せる。
本当は諦めていたのに。
今更。
「そう言えば……」
「ふむん」
私の言葉を拾う真冬が、何だと目を向けて来た。
「さっきから私、当たり前みたいに『真冬』って呼んでいるけれど……矢ッ張り真冬は……」
福沢社長と主従なのだと言っていた。
嘘じゃないとしても、本当は、森さんの次は……
(なんて、まさか)
真冬とそうなりたい訳じゃない。
結果的にそうなったとは言え
この先ずっと一緒に居られるための手段なのだとしたら躊躇わないというだけ。
だって真冬は、真冬の名前を貰う前から私と居たのだ。
ずっと、この先も隣にいてくれさえすれば、良かったのに。
なのに君は、2年間も生死不明で、行方不明で、挙句名前も変わっていて。
「……真冬」
「どうかした?」
「真冬」
「ふむん?」
その手を絡めとる。
指先の温度が合わさって、ひやりとした夜の気温に溶け込んでる。
「好き」
真冬をぎゅっと後ろから抱き寄せて、指を絡めたその手を握りしめた。
もう二度とどこかに行かないように
今だけは……何もかもが許されるような気がして、ずっと手を繋いでおきたかった。