• テキストサイズ

威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第39章 掠取……II







「……え?」


エリスが、ロールケーキの馬車を取り落とした。

クリームが潰え、トッピングが飛び散る。


せっせと飴細工の兵隊さんが、
汚したクレープ生地の回廊をおしぼりで拭いてゆく。




「そんなの、あり得ないわ!

……だって、そうしたら
私は私と私になってしまうのよ?」


エリスが眉を寄せてユキを見つめた。

エリスはまだ小学生くらいの見た目をしているけれど、中身はそうとは限らない。

辿々しく言う声は、ほんの少し小さくなっていた。




「そうだね、AもBも間違いなくキミだ。
彼のそばにいるAも、彼の眼中にないBも、外見は何一つ変わらない。」

「中は違うっていうの?」

「『虚実は反転する』……でしょ?
全てのことが逆さまになるというのなら、まず、根本から違うんだよ。」




確か、こんな問題があった。

Aは正直者。嘘は絶対に言わない。
Bは嘘つき。その言葉に嘘しかない。


ただ、AもBも瓜二つ……というより、二人が同じ人間だったとして、どちらがどっちなのかを知りたい。




「質問は一回のみ。
何を聞くかは自由。

何て聞けばいいと思う?」


そう質問し微笑むユキに、エリスが「いじわるね」と言ってから黙った。


飴細工騎士によって綺麗になっていた回廊を歩いて、クッキーの王宮よりも遥か遠くに行くの。





「私にこんな質問するなんておとなげないわ、ユキ。
むずかしくて判らない。」


「これはね、僕が太宰にも聞いたことがある有名な問題なんだよ」








/ 686ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp