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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第38章 消滅……I






「そうやって、してよかったって
自分に誇れるような恋…僕もいつかしてみたいよ」


笑った三島の言葉に、少女が目を見開き、顔を少しだけ赤くさせた。



「……なんか、驚いちゃった。
大人はね、みんな私に『人に誇れる恋をしろ』っていうの。」

指先を合わせてじっと左手の薬指を見つめる少女が呟く。



この指にいつか、指輪が輝く日は来るのだろうか。

……来ない事を悟っている。

自分の恋は……
大人たちのいう『人に誇れる恋』なんかじゃないから。




「でも由紀さんは違うのね
今の、なんだか心にすとんって落ちちゃった」

「それは良かった。
君にそんなにも想われている人は幸せだよ」



誰と恋をしているのかとか
それが例え……血縁や、性別や、家柄に囚われていたとしても

僕は君のすべてを肯定するために、君の夢に現れたんだから。


肯定してほしくて、君は僕を夢に呼んだんだ。



(嗚呼……美味しい)


甘い。

ものすごく甘くて、砂糖菓子なんかよりももっと格段に、格別に甘ったるい気がするのに
どこか悲しい味がする。



(これが、この子の恋)



「ねえ、由紀さん

ありがとう」

泣いた直後のような少女の笑顔は美しい。


美しいと感じるのは、それが自分のものではないから。




「どういたしまして。
……君の夢からたくさんの感情が流れ込んでくるよ。」

叫びたいくらいの怒りも、
泣きたいくらいの嫉妬も、
体が火照るような喜びも。



(これだけなら……2週間くらいは保つかな)


否、この夢はそろそろ覚めてしまう。




ならあともう一人二人くらいなら、夢を歩けるかもしれない––––

そう考えて腰を上げた直後。




「待って!」


僕の外套の端が掴まれた。






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