第38章 消滅……I
「ねえ、由紀さん。
恋ってどんな味がするんだと思う?」
この夜、僕が歩いて捕まえた夢は
高校生くらいの女の子だった。
学校ではそう目立つタイプではない。
中心的な女の子たちとはそこまで喋らず、とはいえ特別男子と仲が良いわけでもない女の子だった。
変わり映えしない学校生活にマンネリを感じ、ずっと何かが満たされず
かと言って泣いてもスッキリしないから眠れない夜が続いていた……
というのが、この夢を見せている僕には判る。
自然と流れ込むように、少女の思考と
もやもやとした心の渇きが伝わって来る。
嗚呼、彼女も人間なんだなぁ…
なんて、ね
「甘いのに苦くて、心に絡みつくのにすぐに解ける粉雪みたいだ、と君は思っているね?」
「あー、思考読むの禁止ですよ〜」
足をぱたぱたと揺らして少女が年相応に笑う。
この夢はどうやらお気に召したようだった。
「すっごくね、この辺が……キュってするの。」
抑えつけるように添えられた右手は彼女の心臓を覆い、心拍は波紋となって花の香りに混じる。
「吐きそうなくらいに言葉が出そうなのに、いざ目に入れると見つかりたくなくて隠れちゃう。」
はあ、と吐息した少女。
熱を帯びた少女の目は、恋をする人の目だ。
その人への熱意と恋慕。
この女の子の思考回路は、すごくすごく甘かった。
砂糖菓子そのものみたいだ。
簡単に手で崩れてしまう砂糖菓子は、恋をしている女の子たちの心の強さに似ている。
「––––…………」
にこにこと聞き手に回る三島は、少女の恋バナを食糧に話を聞いている。