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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第37章 天の花嫁






「……どういうことですか」



菜穂子の震えていない声は、理性的な穏やかさをもつ三島に毒されてきた、あるいは部下として成長したのだと感じられた。

感じられたからこそ……このままでは駄目なのだと判る。

こいつにも、三島にも。




「三島からの命令だ。菜穂子は留守番だ」

「納得のいく理由を開示して下さい」

「駄目だ」


これで二度目だ、と俺はどこか上の空で他人事のように菜穂子を見据えた。

実際他人事だけど、俺が自分から引き受けた時点で責任は生まれた。
三島と分割されたとも言う。


断れたことを断らなかったのは俺の意思だ。




「––––––意思」

「意思、ですか」


呟く声を拾った菜穂子が反芻させる。



「あァ……そういやなぁ。
あいつと、三島とこんな話をしたんだ。

愛さなきゃいけない意思がどれだけ歪んでいるのかッてな。」


「は」


菜穂子は表情を変えない。
いつもそうだ。

三島にしか見せない表情が、こいつの真意なのかは測りきれないけど。



「あいつは人間の心が判らない。
判らないから、判らないなりに投げ出さないで考える。
そうして決めたのが、手前ェを留守番にさせるッつーことだろ。」



こんな言い方で菜穂子を丸く収めようとする俺は意地悪い。
……なんて、そんなことは思わない。

何のために三島が、悪役を買って出たンだ。




「だから、三島のために留守番していろ。」

「そのような理由では納得いきません。」


菜穂子の目は、真っ直ぐに俺を見る。






「なら、どうすれば良い?」




……不意に。

そんな声がして。



ハッと菜穂子が後ろを振り向き、俺が前方を見遣れば

扉に背を預けて理性的な光を宿した紺の双眸が、この部屋全体を一枚の絵みたく見つめる。



そこには三島がいた。






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