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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第37章 天の花嫁






「愛とか恋とか、調べてみる、とか。」

「愛なんてものを調べるあたり、僕は生物として終わっているような気がするね」

なにを今更、そう言って伸ばした手は空を切った。


小皿の上にあったはずの軽食はすでに紅葉姐さんの腹の中。
相手が相手なだけに、俺は握った拳を大人しく膝に落とす。



「あった。
愛とは、相手を慕うこと、可愛がったり大切にすること。だって?」

「あー、まさに教科書って感じの書き方だな」

三島の手中にある小型電子端末の辞書機能は、いつだって模範解答しか示さない。





「大切にすること、って……

中也も紅葉姐さんも僕は好きだし、大切なんだと思うけど……
でもこうして当たり前みたいに口から出るこの好きもどういう好きなのかは……ちょっと判らなくて」


三島が俺を見てからそう言う。

普段のこいつならすぐに解決しそうな難問より、
人間として初歩的な、恋愛という感情に訴えるものは理解不能区域なんだろう。



「そーいうんじゃなくてだなぁ〜……なんつーか……
こう、自然に異性に感じるやつだ」

「可愛い、とか」

「それは生物の本能だと思うんだよなぁ……考えるよりも先にってやつ」

判らない、それでも三島は考え続ける。


思考することは人間としての第一歩。
それを放棄するようなこいつじゃない。

それに漬け込む俺は、とっくに三島の考えに囚われているんだろう。





「じゃあ、反対の事を考えるというのは?」

「え?」


顔を上げた三島からの提案。

愛の反対は憎である、愛の反対は嫌悪である。




「憎み嫌うこと、だって。
で、憎いって言うのは……気に入らなくて腹ただしいこと、だって」


「うわー似合わね」
「本当よなぁ」

紅葉姐さんも袖を口元に当ててくすくす笑う。





「……そんな人いないなぁ」



そんな人がいないということが異常なことも三島は判っているのだろうけど……

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