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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第36章 此処からまた





「……私、は」


そんな言葉。
今更もらっても、嬉しくて仕方なくて、それでももう遅いのだと判る。

もう遅い。


だって……




「だって私は…ッ、私と君は、
真冬と私という別人と出会ってしまったのだから」

「嗚呼……そうさな。妾と治という、3年前の繋がりなどない別人として出会うことを望んだ。」


真冬の言葉は辛辣だった。

私から言ったくせに、痛くて痛くて仕方ない。
だって、この3年の絆を無駄にしてしまったら、私と君には何が残る?



「それで、良いのか」


「うん……」

それでいい。



それでいい?


よくないよ

よくない。

現状維持に逃げ込んで、ずっと同じことを続ける組織でどうするのか。

一つの改革は全てに影響するのに、
今更なかった事になんて出来るわけない!





「だめ!」



嗚呼ほら、言えるじゃない。

このままで良いという、温くて心地いいものに囚われたらだめだ。



「本当に?」


私へと問い掛ける真冬の言葉は、甘い現状維持への誘いだ。

そんなものは。



「君は君だよ。
名前が変わっても、君なんだ。
あの日から私は立ち止まったままだ。

そんなものは駄目だけれど、だからと言って真冬が離れる理由にはならないでしょ?」


「ここまで清々しい開き直りは久方ぶりに見たな」

「他に誰が?」

「乱歩」


嗚呼、と納得する私は矢ッ張り私だ。


恐れが消える。
何でだろう。

先ほどまでの焦燥がなかったかのように、
私の口からは自然と言葉が溢れ出た。





「好きだよ真冬。君が好きだ。

あの日からずっと君を想っていた。
お慕いしていました。」

言って、気付く。




「だった……はおかしいよね。

好き、今も変わらず君が好き」



これが私のやり方だ。


あの彼にも見ててほしかったなって
今更そんな事、もう遅いか。






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