• テキストサイズ

威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第35章 荘厳は淑やかに







「……治」

「なーに?」



ぱさ、と真冬の足元に真紅色をした帯が垂れ落ちた。

肌を滑る純白の着物に、襦袢の紺色もはだける。袴も。
その白い肌を滑り落ちた長い黒髪も、真冬の背中を煙らせる。


私は真冬の声を背後に聞きながら、目を閉じてシャツを脱ぎ、洗濯機に放り込んだ。


そんな中でも、音すら聞こえないこの空間からひしひしと
脱いだ背中に突き刺さる視線。



「…………。」

「視線が熱いんだけど〜……?真冬」

「否、もう何も言うまい……。」


あ、今肩を竦めたのが背中越しに判った。


真冬の体温なんてもう覚えていない。
二年間も音信不通どころか、私は、真冬は……もう……



「妾が目の前にいると言うのに考え事とは……大した度胸よな?」

「ごめんごめん、そういう事じゃなくってさ……」


たしかに聞いたんだ。

君がいなくなった直後の嫌な空気の感じも、察知出来た。

……でも…もし、もしも
もしかしたら、もう少し早ければ、織田作もって……考えてしまう。



「ほら……お風呂、入ろう?
真冬に……触るの、何年ぶりかな」


真冬の長い髪から、今の真冬の家の匂いなのか……それとも、他の誰かの匂いなのか判らない香りがして

気に入らない。




「……この匂い……乱歩、さん?」


かもしれない。
すごく嗅ぎ慣れた、仲間の匂いだったから……

でも……着物は洗濯出来ないから、柔軟剤の香りじゃあないってことだよね?





/ 686ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp