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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第35章 荘厳は淑やかに





「……ぅ、っはぁ…ッ」


けほ、と
横たわった彼女の全身が、弾むように跳ねた。

私は彼女の腰に手を回して、自分に寄り掛からせるようにして抱き上げる。
布越しに静かな鼓動が腕に伝わってきて、私はほっと息を細く吐いた。




「……ぁ、真冬……?」

「–––––……」


閉ざされたまつ毛がぴくと一度だけ揺れて、ふっと黒曜石が覗いた。

ゆっくりと、その双眸に私の影が映った気がした。
暗いからよく、判らないけど。




「……ぉさ、む……」

「……うん……そうだよ……」

くたと首を凭れた真冬は、私の腕の中で私を見上げる。



どうしよう。

整理が出来てないのは
私なのに。



「ほんとに、本当……?
ねえ、真冬……?君だよね?真冬?」

「……治が信じる、妾だと……思う、が」

咳き込んだ彼女の細い首には、私の手の跡がしっかり刻み込まれていた。
がくんと揺さぶられた彼女が、頭を押さえる。



「……そう、さね……
酸欠のあと……脳に血が行っていない時に、相手を揺するのは一番駄目な行動……だね」

「………だい…じょうぶ?起きられるかい?痛いところは?」

強いて言えば首が痛いと彼女は笑ってみせた。
こんな時なのに、私のために。


私といえば、視界が揺らいで、

彼女の像さえはっきりしていないと言うのに……




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