第34章 甘くて苦いもの
「どんなって……初対面のはずですが……」
どんなと問われても、その顔も声も
どこか引っかかるのに脳が認識しない。
させてくれない。
だからむしろ、どんなではなくて……
「ふぅん……質問の仕方が悪かったのかな。
真冬のこと知ってる?んだよね?
真冬の過去とか、正直暴かれると困るし……
今のうち、話つけときたいなって思ってさ」
乱歩さんのそれは、家族を擁護するかのような、保護者の話し方だと思う。
武装探偵社は変人の集い。
烏合の集。
ワケあり人員なんてそれこそ普通で、
家族でなくても家族だと言い張るだけの何かがあるのかもしれない。
「乱歩さんは……真冬さんの、何ですか?」
「そうくるか。
んー……身内?
家族?育ての親?とか、そんな感じ。」
自分の予想はほとんど当たっていたけれど、腑に落ちないことがたったひとつ。
「なら、なぜ私への態度的なものが辛辣なのか判りません。
……私、わりと傷付くんですが……」
「辛辣?言葉も交わしてないのに?」
乱歩さんのその言葉に、あれ、確かにそうだよねと思い至る。
違う、違う。
彼女とはあの夜中に出会って話した以前に、ずっと前に……
『……似たような組織に与しているやも知れないが』––––––
ひどいノイズ。
まるで侵食してくるみたいに、機械越しの音が響いた。
何かを忘れている気がする。
とても大切で、
「乱歩!」
たしか、失くした後の事を考えたくなくて、
「真冬!……みんな無事?捕まえた?」
だから記憶の底に、
「任せるが良い。
というか割と罪悪感からかそこまで遠くには逃げてなかったからね」
自分で忘却していった、
「…………あ、」
ノイズの晴れたその姿は