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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第34章 甘くて苦いもの





「えっ……」


銀色に煌めいた刃に、月が映り込んだ。

太宰の視界、自分の真横に入ったそれに身体が吃驚しているのが判る。




「–––––ハ、妾の専売特許たる霧をこのように異な化生どもに使われるとは。
ふむん……なかなかやる」




聞き間違いかと


思った。



「真冬っ?
ほんの少しだけツッコミ所が違う気がしなくもないけど、ちょっと待って!」



ノイズが走って、その声が声だと認識できない。

脳がそれを拒むように、まるで機械越しの荒さが耳に届いた。



リン、と鳴った鈴



あの夜中に聞いた音とまったく同じで

変わらない……



それは、



「取り敢えず、この幽霊の謎は判っている。
連れ戻してくるから、乱歩はそこにいて」

「判ったけど……」


あり得ない速さで、鈴が鳴ってぶつかり合って
それは廊下の奥へと消えてゆく。

自分の真横をすり抜けて。




「……行っちゃった。」

やれやれと肩を竦めて息を吐く様は、まるで彼女の兄か弟のような感じ。

細められた翠玉の瞳は、それからこちらへと向く。




「ねー……僕
ずっと聞きたかったんだけどさぁー……」


乱歩が、眉を寄せる太宰を振り向いた。



あり得ないものを見聞きした、そんな貌をしている。




それは、あの異常な鈴鳴りの早さか、

はたまた……いつか真冬にも同じことを聞いた





「真冬と、どういう関係?太宰

私情はどうあれ、仕事に来たすようなんじゃ……
僕もいち探偵社員として看過出来ないし?」




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