• テキストサイズ

威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第34章 甘くて苦いもの





「コレが、ここ最近の幽霊騒ぎかや……」



ぼんやりとした影が靄の中にいる。



確かに幽霊に見えるし、

こんな暗い中でこんなの見つけたらそりゃ騒ぐだろう……




「あっ!真冬っ!?来て……た、のッ!?」


いち早く聞こえて来たのは乱歩の声だ。

ばたばたと階段を駆け上がってくる音が聞こえる。




そして、男子生徒と女子生徒が次にこの幽霊を見て、顔を青くした。



「ひッ!お、お化けっ!?」
「其奴ですわ! ゆ、ゆゆゆゆ幽霊……っ!」

「……あれ?探偵社さん、あとのお二人が来ておりませんが……」


一般生徒たちがジリジリと後ずさるなか、守衛さんが懐中電灯で幽霊を照らすも
幽霊は夜霧に紛れてぼやけている。






「はぁ!? ちょっと何やってんの!?


国木田ー!?

太宰ー!?」





乱歩の声を聞いて、


真冬がびくんと身を震わせる。




それを見逃す乱歩ではない。



「……え? な、なんかマズい……の?

真冬……?」



そう聞いた直後、乱歩や生徒二人、守衛が来た方の階段ではなく



幽霊の行く手を塞ぐかのように、


前方の廊下から遠回りをして、青年二人が走ってきた。





「幽霊……、ほ、本当に……いる……!」


「私も吃驚だよ……確かに幽霊騒動に相応しい幽霊だ!」



夜霧を挟んで、真冬は早まる鼓動を

着物の上から押し付けた。


押さえつけた。


でないと。




ぼんやりとした霧に阻まれる廊下の向こう、


その姿を確認してはいけない。




/ 686ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp