• テキストサイズ

威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第34章 甘くて苦いもの





––––ッとん、とわずかな音だけを立てて
真っ白くぼんやり浮き彫りになる人影が紐を手繰って袖に仕舞った。




国木田や太宰の予想と違うのは、

彼女が入って来たのが職員玄関からでも、生徒玄関からでも無いこと。




「……幽霊……ねえ」

ここは一年生の廊下、上階は屋上である。



クロスダクターの設置された屋上直下のこの廊下は
白い天井が見事に四角くくり抜かれ、

取っ手が設置されているのを見るに、もともと非常用に学校側が開けておいた穴なのだろう。




彼女の手には手帳があり、そこにはちゃんとこの学校の七不思議について書かれている。

ついでに乱歩から聞いていた、幽霊騒ぎのここ一週間の天気とかも書かれていた。


そしてこれを見るに、ここから判ることと言えば……


幽霊の正体なんて、




「矢張り、幽霊は単なるブ」




––––ぎゃあぁぁぁ––––––!


唐突に響き渡った大声の悲鳴に吃驚した。


予想外のことに、自分もわりと神経が過敏になっているらしい。




「今の、は」



独歩の声か


下から聞こえなければ不自然なのは判っていたけど(何せ妾の上階が屋上)、

近過ぎる気が……する、ような。




「ちょっと国木田、そんな大声近所迷惑だって……!」


「ひぃぃっ!に、兄様っ!」

「だ、ダイジョーブだよナオミ……っ」


すぐ下の階にいるのか、この声の近さだと。




というかなんだか割と色々、聞いたことのあるようなないような声もあれば
まったくの第三者の声も多数ある……





(兎に角今は合流––––––……)





ふと背後に何かを感じて、懐のナイフを抜き身で


後ろの影を斬りつけた。



/ 686ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp