第5章 そのバーに集まる影
その路地にたゆたう紫煙は、葉巻独特の、甘くて苦い匂いがする
「やァ、久しぶり」
「…太宰か」
いつしかここで一緒に呑むのが、当たり前になっていた
「太宰君、また怪我、増えてませんか?」
「そこは安吾、私は自殺未遂に失敗することを目論んでいるからね!」
なんて事のない、小さな場所で、小さな椅子に座して、3人で…
たまに私とともに来る暗殺者と 4人で呑む酒が、とても美味しかった。
小さな日常が、マフィアという事を忘れさせるくらい穏やかに過ぎてゆく。
そういう日常ほど、壊れやすいのだと
私は知っていたのに