第34章 甘くて苦いもの
「取り敢えず、社長に許可貰って張り込むか。
場所が場所だけに、放置はしておけん」
「おお!探偵っぽい!」
あんぱんと牛乳だね、判るとも!と独りごちる太宰を尻目に
いつの時代だと目で訴える。
ジェネレーションギャップで、向かいの兄妹は多分このギャグは通じていない。
「そうだ。良ければ、二人も来てもらえない?
ほら、学校の造りとか色々聞きたいしさ」
太宰の言葉に谷崎兄妹が互いを見つめ、
「いいですけど……」
「お兄様が行くのなら」
と賛成した。
否、参戦した。
「オイ太宰……!
いくら幽霊とは言えど、一般人を巻き込んで何かあったら……!」
「大丈夫大丈夫。いざって時の手段はある!」
本当か?
国木田の目が疑わしいものを見る目つきになったがそこはスルー。
どうして連日、廃病院だの怨恨だの夜中の学校だの幽霊だの……
こうも湿っぽ〜い事件ばかりなんだ!
「お清めの塩を用意しておこう」
「食べ物は大事にしないと駄目だよ国木田君?」
「塩に賞味期限はない!」
そういうことじゃないよと太宰が立ち上がる。
「では、今夜十時半に。
我々はこの学校の正門前に居りますので」
「ハイ……宜しくお願いします」
事務員さんと守衛さん、生徒二人が礼をして、
武装探偵社は取り敢えず、社に戻ることにした。
他に手が空いて来て、尚且つ
夜中の学校について来てくれる人を集うために。