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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第34章 甘くて苦いもの






「合格だ」



昼一番、社長に呼ばれた太宰が来れば、開口一番にそう言われた。

そして厳格に口を閉ざしたままの社長は、尚も厳しい表情で、太宰を見据える。




「国木田に貴殿の動向を監視をさせ、入社に至る結果なのか。

その真贋、見極めさせて貰った」


太宰が入社するまでのここ数日間といえば、大きな事件などたった一つ。
あの、隣町を騒がせたバージンキラー事件。



確かに、自分も真実に自力で辿り着けた、

しかしその理由で合格となれば、乱歩さんの方が
自分より真実に至るのが早かったのではないか––––と

そう、思ったのだ。




「否。国木田が評価していたのは、此度の事件の真相ではない。
貴殿が、車に取り残された老齢の方とその孫を助けたというところだ」


嗚呼、とそれで合点がいった。

あの時、二人で助けた市民の二人。
その救助の様子を見ていたのは国木田君だけだ。




「よくやった。その後、手に火傷などはないか」

「ありません。大丈夫です」


問いかける社長に会釈を返し、太宰が微笑む。



国木田君、君への印象を改めさせられたよ。

微笑むというより、どことなく塩っぱい微笑を浮かべた。




「入社御目出度う。探偵社一同、貴殿の今後の活動に期待する」

「それは、勿論。ありがとうございます」


ようやく人を救える組織に、正社員として加わることが出来た。




しかし、当初の目的である彼の遺言……

弱者を救い孤児を守るということをしなければ、あの彼に顔向け出来ないから。




「武装探偵社に入れて良かったと……

今、心からそう思います」




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