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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第33章 Carmine tears






一昨日ほど、昼よりの朝に
中原幹部とまじえた言葉をふと思い出した。




『昨日の、三島からの頼みって何してきたンだ?』

『はい。
三島幹部名義で 少々、司法省の方へ出向いておりました』


『は? 三島が?《ウォッチャー》連中に?』



確かその時、中原幹部は訳が判らないという顔をなさっていた。

その時の私には、そんな顔を幹部がされた理由がいまいち判らなくて……




『確かにポートマフィアと政府機関は仲が悪いですが……』

『いや、違うンだよ。
あいつも色々あってな……』



色々とは何ですかと、私は聞きたかったのかもしれない。

それでも私は、聞かなかった。



中原幹部と太宰幹部、あの暗殺者の彼女と三島幹部。

彼ら四人だけにしか判り得ない一線というものが、目に見えてしまったから。

その境界が目に見えるものほど、虚しいものはない。




そして私は、


(……三島幹部に、救っていただいたから)


三島幹部が居なかったら……今ここにはいない。


あの日、彼の優しさを直視した。
あの時、彼の怖さを実感した。



そばにいられれば良かった。

ふと私に向けられるあの笑みを、そばで見ていられたなら。



受け取った多大な恩を、お返し出来ていたら。

そう、あの日からずっと、ずっと–––– 私は。





「着きましたか」

【–––––– 】


私はすとんと獣から飛び降りて、その直後、獣が虚空に掻き消えた。

矢張り、中原幹部のお車をとっくに追い越してしまったらしい。



そのまま、私はポートマフィアが誇る夜の摩天楼を着飾る高層ビルへと急いで向かう。

並び立つ内の、一番高いビルへと。




今からお会いするのはポートマフィアが首領、森鴎外様その人で

正直一人で行くのは畏れ多い。


でも、私はむしろ歩調を早くさせて目的地に急いだ。




三島幹部の為になら何だって出来ると

あの日誓ったから……



あの日の、


『いつか近いうちに三島君の見せてくれる夢から
君が醒めたとして、その時君は、現実との落差に耐えられるの?

三島君からの慈愛を失った君に、価値なんてあるのかい?』




太宰様の呪縛のような言葉が

未だこびりついたまま。


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