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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第33章 Carmine tears





「戻って来ました。彼らをお願い致します」



中也と菜穂子が、三島を求めに市民体育館へと戻ってくると
そこには茶色い外套を着崩した青年だけが立ち回っていた。


あのとき一緒にいた金髪の彼はどうしたのかと
菜穂子は口には出さなかったものの首を傾ぐ。




「あ!ユウ!」

「は?ユウ?」


青年の翠色の双眸が菜穂子を捉え、ぱたぱたとこちらへ走って来た。


中也が聞きなれない名前らしきその言葉に眉を顰め、担いでいた市民を降ろす。



「あー、さっき与謝野さんが運んで来たあの彼かな?
迎えが来たら丁重に引き渡してって言ってたや」


こっちに寝かせて、と中也と菜穂子が運んで来た市民を床へ横たえた。




「おい菜穂子、ユウって手前か」

「はい。名を知られるわけにはいかなかったので。
もう隠しようがありませんが」

中也たちが靴を脱いで床へと上がる、そのまま一番広い部屋へと向かった。




乱歩が前を歩く中、長い廊下で
二人が声を顰めるようにして言葉を交わす。




「……早く、あいつを夢から出さなきゃな」


中也が菜穂子に向けたのか、そうでないのか……

呟くようにそう言う。




「はい。三島幹部が今回いなかったら……
きっと、この事件はもっと壮絶になっていました。

死者も沢山出て、この街は軍警さえ拒む隔絶都市となっていたでしょう」


「ま、手抜かりなくやってのけるあたり、嫌味が昇華されてもう当然になってる奴だよ」


勝ち戦しかしなさそうな奴、というイメージはあったが、
あいつは元からこっちの勝ちを確信していたのだろう。




「確か、術後目覚めて三時間はまともに歩けるようにしてくれてるンだっけか?」

「はい。あの女医の方はそのように。
急いで車を飛ばせば、マフィア本部の病室に充分間に合うかと」




がらがらと廊下奥、広い部屋のドアを開ける音がした。



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