第33章 Carmine tears
「ふぅん……胸糞悪い話だねェ……
あいつの拠点がその廃病院で、元々はあの真新しい警察病院の跡地だったと」
「はい。つまり……バージンキラーが男を狙っていた理由は、堕胎の原因にさせた奴だから。
男性の象徴である種袋を除外するという去勢行動をして、
自分たちがこうなった原因たる男を殺害し尽くそうとした」
大戦終了後、無法地帯と相成ったヨコハマでは
強姦が圧倒的に事件として増えた。
原因は、夫を兵士として送り出して、離別し未亡人となった女性の数が多かったこと。
そして、徴兵に行ったといういわゆる男尊女卑の考え方に基づいた男側の身勝手などなど……
「あの廃病院で堕胎され、生まれる前に亡くなった水子の数はおよそ数十万という資料がありました」
「つまり……バージンキラーは、生まれてくるはずだった水子たちの怨念の集合体ということか」
社長の言葉にええ、と頷いた。
「でも––––––それだと、夢枕とか、こういう火災の時の温度変化に影響のない、
初期に発表された『恒常性』の異能力はどうなるンだィ?」
なぜ三島の異能力や、気温とかに変化されなったのか……
その異能力の対策として、こんなにも大掛かりな事になったというのに。
「それは、その怨念は、『元からこの世になくて、それ即ち死亡している』からという絶対的条件……
この世にないと認められているから、全ての事象をすり抜けられたという事実かと」
「なるほど……
それで全てに合点がいった」
(……しかし、私はあの廃病院が本丸だとは思わなかった。
今回あの電話をくれたあの人は、事実をその時にはもうすでに見抜いていたという事になる……か)