第33章 Carmine tears
「太宰」
「社長!」
与謝野女医、国木田君、私が集まったところで
交差点の向こうから社長が走ってきた。
その羽織を叩いて、煤が落とされる。
「全員無事か」
「は。乱歩さんは向こうの体育館に、真冬は援護で前線からは離脱しています」
国木田君が頷いてそう言った。
「嗚呼、真冬なら、こっちが手を焼いていた
バージンキラー本人が乗り移った奴を撃っちゃったけど、妾たちはおかげで無傷さ」
少し離れた場所に転がった胴体と首。
服装は……軍警のもの。
「……真冬とも連絡を取ったのだが、少々様子がな。
真相なら乱歩か、新人の彼が判っているだろうと言っていた」
社長の言葉に与謝野女医があっけらかんとし、私とて吃驚した。
だって、さっき真相に気付いたのだ。
だとしたら、私より先に真実に辿り着いた者とは、その女性になってしまう。
街の焼却の件もあったけれど、彼女は矢張り相当の……
「え?ちょっと太宰、あんた真冬と知り合いだったのかィ?」
「いえ……、だって、まだ一目だってお目にかかれていないんですよ?」
やれやれと肩を竦めながら言えば、国木田君たちの苦い顔が見て取れた。
どうして、そんなに会わせたくないのだろうか。
彼らが全く判らない。
「……だが、真冬が、太宰になら判ると言っていた。
だから時期に会えるだろう。
太宰、事の真相を」
結局それ以上追求することは出来なくって、
私は先ほどの話の続きを始めた。