第33章 Carmine tears
「与謝野女医!」
煙の晴れた交差点の中央、そこには武装探偵社でもよく見知った仲間である
与謝野晶子が、倒れた市民を介抱していた。
そこに私と国木田君は駆け寄る。
仲間を見つけるだけで、そして無事だと判るだけで、とてもほっとした。
「ああ、国木田に太宰じゃないかィ。ちょうど良いところに。
こいつら運んで頂戴」
「生きているのか?」
「勿論」
国木田君の問いに与謝野女医が笑って答える。
ぱちぱちと燃える炎が、その笑顔を橙色に染め上げた。
「しかし……この人の量、与謝野女医たった一人だった訳じゃないですよね?」
「そりゃそうさ。クロと菜穂子ってやつ、二人が手伝ってくれてねェ」
私が聞きたかった事に素直に答えてくれた。
即答だったから嘘はない。
でも、菜穂子––––––?
「…………」
「どうした太宰」
「いや……その菜穂子って子、私の知り合いの名前と同じでね。
まさかこんな所に居るわけないと思うけど」
問うてきた国木田君に、そう笑って答えた。
私のまさかはよく当たる––––なんて
その昔……あの暗殺者の彼女に言われたっけ……
「それで、犯人というか、バージンキラー本人が乗り移っていた人は誰だい?」
「そこの、首の取れちまった軍警だねェ。
でも、こういう乗り移るとか、憑依系異能力だと本体が捕まえられなくて困るね」
与謝野女医の、その言葉で。
私はハッとした。
バージンキラーの異能力は、『恒常性』だと推察されていた。
でも今、与謝野女医は何て言った?
「……うふふ、やっと判ったっていう顔だね、国木田君?」