第32章 Vermilion Bullet ……II
「痛っった!ちょっ、今の結構入っ……」
「ど阿呆、そんな事先に言え!
どうして一人で行った!?
もしもそこで囲まれて殺されていたら、貴様一人がどれほど社に……!」
国木田君が激しく激昂して、立ち止まっている暇なんてないのに私の襟首を掴んでくる。
首が締まる、まさか国木田君が私の絞殺に与してくれるなんて思ってもみなかったけれど、矢ッ張りここは美女が良い!
「ギブギブ……っ。はぁー、もう、死ぬかと思った……」
手がパッと放されて、乱れた首元の服を直す。
「聞いているのか貴様!」
「5秒前に人を絞殺するところだった君に言われたくないなぁもう……」
でも国木田君、そうやって思っていてくれていたのか。
ふ、と私が笑えば、チッと舌打ちをされた。
「そも、その情報とやらの発信元は!」
「いや〜それが……その、探偵風に言うと割と信憑性あるタレコミって感じ……?」
今度こそ国木田君の手刀が頭に落ちた。
舌を噛むかと思ったよ……もう。
「割れる……」
「割れるか!ったく、そんなものを頼りに、何をしに行ったと言うんだ!」
そこに訪れた時、私が目にしたもの。
照明のように、仄暗く光を放つ赤黒いもの。
「実はね、そのバージンキラーの拠点には赤黒い繭みたいなのがあって、そこには沢山の
"バージンキラーになるべくモノ"が収まっている」
しかし、私が目にしたのはそれだけではない。
作為的に、人の手で、第三者が、その沢山の繭を斬っていたという事実。
自然に孵化したような繭とその斬られた繭を比べれば一目瞭然だった。
(……私よりも先に、この一件の真相に気付いている者がいる)