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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第32章 Vermilion Bullet ……II






「ふう」


真冬が銃の測距儀を繰った。
伏せ撃ち(ブローン)の体勢をとっていた上体を起こす。

手にしたバレット社製のライフルからは、細い白煙が上がっていた。



ここは以前、自分が目をつけていたビルの屋上。




あの時、遮蔽物の有無、見晴らし、風上の風の最低の強さ、距離、

床の温度などなどを事前に調べに来ていたのだ。



座り直した自分の少し離れた床には、あのビルから取り出した長細い鞄があった。

あの床下格納庫にしまっておいたのも仕込みの内。




「ふふん。
妾の銃の扱いは、ま、落ちてはいないようで安心したさね」



誰が"刃物で"対象を先んじて死亡させる異能だと決めつけたのか。



真冬の異能力、逆説的因果の形成順番は、

死亡、殺戮、原因行動……である。



つまり、対象を『死亡』させるには、真冬がたとえ何の武器を使ってもいい。



……という半ば無理やり、『そういうもの』だと概念的に
枠に押し込めて、こうなったという訳だった。




暗殺者とは、いつ如何なる時でも対象の首を狙い、

そのために銃の腕を、
刃物の扱いを、
薬物の調合を、
柔術体術の習得を、
果てにはワインの選び方、銀の磨き方、家庭的な料理の味……

などなど(一部趣味に入る)を覚えて初めて戦場で使えるようになるものだ。




(……と、いう受け売りを己が言葉のように言ってもなぁ……)



自分をつかう主のために、出来ることは何だってしてきた。

……それが、まあ多少、趣味の範囲に入っていると言ってもだ。



福沢殿。

森殿。


そして……





「……ん、あれは独歩……と」




独歩と。



独歩と、その、隣に、いる、の、は






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