第32章 Vermilion Bullet ……II
チカチカと明滅するか細い光。
「––––っ!しゃがめ菜穂子ッ!!」
その光がなんだったかと頭の中で思い出し、
該当する武器やら符丁やらと照らし合わせたとき……
一つだけ、この現状であり得て、
尚且つそれしかないという確信があったもの。
それは––––––
「狙撃だ!」
中也が言い終わる前に、それは飛来した。
(マズルフラッシュ……!)
甲高い風切り音を立てて、過たず
片腕のバージンキラーの頚椎を引き千切り
喉笛を正確に狙った一撃が、強引に首を掻き切った。
「くっ……!」
見えない遠距離の相手に
恐慌に駆られそうになった菜穂子だったが、すぐさま身を翻して地を蹴り狙撃のレンジから離脱する。
狙撃銃の測距儀は倍率が高ければ高いほど良い、というものではない。
それだけ手ブレや微かな標的の移動、風が影響し、狭い視界からアウトするのは確実だ。
異能を使えば超高速で動ける菜穂子などは、狙撃者たちの天敵とも言える。
直後、菜穂子の前方に滑り込んできた
四十人の中の一人のバージンキラー、その着地点に弾丸が穿たれる。
ぢん!と弾がアスファルトに当たって跳ね、バージンキラーの進軍を牽制させていた。
足の置き場に弾が食い込み、バージンキラーが姿勢を大きく崩す。
「小賢しい……!」
そう悪態吐くように吐露したバージンキラーが前方へと転がり跳ぶ。
その勢いのままに無理やり前方へと転がったバージンキラーを追うように、二撃目、三撃目、と鋭い狙いの狙撃が詰めた。
「本命バージンキラーが死んだっつーことは……」
ごろりとまるで戦乱の世みたいに転がった生首を一瞥し、
置いてきた女医を見遣ると、彼女の周りには
事切れたようにバタバタ倒れるこいつらがいた。