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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第32章 Vermilion Bullet ……II






「彼は––––、彼も眠ってしまっているのか。
外傷にさしたる大きいものはないが……」


「あァ、起こしてやるなよ。
こうしてやっと、市民の憑依化を防げたンだからね」


彼女の言葉に、乱歩と国木田が耳を疑った。





「この眠っている超常現象は、彼が……!」

「そうさ。何とか押さえつけてくれているッて次第ね」



クロというあの小柄な青年の外套に包まれ、夢に囚われた青年を

与謝野が国木田に渡した。




「妾はこれから、向こうの交差点に行くよ。
あそこにバージンキラーが集まっているからね」


与謝野女医が医療用鞄に、供給されて来た応急処置道具を詰め込んでゆく。



「了解した。
向こうの並木道の鎮火は為されているから、通るなら向こうから行った方が良い」

「え? 鎮火されているのかィ?市民も軍警も寝てんのに?」


与謝野女医の当然の問い、乱歩が頷いて答えた。





「真冬が仕掛けたやつが、首尾よく作動したってところかな」

「へえ、さすが社長の懐刀。 にしてもあの新人は?」

きょろきょろと見回しても、新人もとい太宰はここにはいない。




「先ほど社長とともに、眠ってしまって避難し遅れた市民を運んで来ていたな。
嗚呼、という事は向こうの交差点でちょうど会えるかもしれない」


おやそうかい、そういうことかい、と与謝野女医が立ち上がる。




「俺たちはここから離れることが出来ない。
向こうの負傷者の治癒は与謝野女医頼みになってしまうが……」

「は、医者として当然のことだねェ。言われるまでもないよ」




振り向いた与謝野女医が、ニッと笑った。

その赤紫の瞳が、大胆不敵に歪められる。




「……ま、スクランブル交差点だから、

四方八方敵だらけッて事態も有り得ちゃうけどね」




与謝野女医のその言葉は、のちに本当のことになるなんて

その時はまだ判らなかった。




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