第31章 お花畑で会いましょう…谷崎潤一郎誕生日7月24日記念
「あ、見てナオミ。もう秋の花が出てるね」
「なでしこ……ですか。可愛いですわね。
浴衣とかの模様によくあしらわれていますけど、秋より夏の花の方がいいのではなくて?」
ナオミが持っている浴衣にもなでしこが確か 刷られていたはず。
妹の純粋な問いに、潤一郎が眉を下げて笑う。
「うーん、でもホラ、昔は旧暦だったから……
よくある話、七夕は八月にずれているってのだと……秋の花は夏の花ってことになるし」
「嗚呼、たしかにそうですわね」
秋の花なのにもう売っているのね。
一足もふた足もお早いのではないかしら。
環境に合わない待遇は、自らを滅ぼすだけだと
(……で……も、君が……て……まったら
こ……は……楽園……跡……なく、となっ……消え……う)
たしか……そう、たしか、誰か、に、昔–––––
「……オミ……ナオミ……っ?」
「はいっ!? どういたしましたの?お兄様」
頭痛のする頭を押さえ、ナオミがびくりと身を震わせた。
だめだ、モザイクのかかる情景がすべてを覆い隠している。
その声にノイズが走り、聞くのを阻害してくる。
「……矢ッ張り、なんか、変だよ」
「……判らない事が判らない……
それって実際、何も存在しないということになりませんの……?
お兄様」