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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第30章 Vermilion Bullet ……I





「く、この……っ!」



咬合音を立てて、獣がバージンキラーを食い千切ろうとしたが

それはぼろぼろのコートを引き裂いただけに留まってしまった。





ひらりと舞った布切れが 菜穂子の視界を閉ざし、



「鬱陶しいですね」


手にした手綱錫杖で斬りつける。




ひらけた視界にバージンキラーの鉈の刃が

一直線に滑り込んできて、錫杖を引き戻し斬撃を柄で弾く。



甲高い金属音が鳴り響いた。





「アはは、防御で精一杯かよォ!?」


「お黙り下さい––––その頭、飛びますよ」




菜穂子の言葉ののち、人間の絶対の死角……直上から

バージンキラーの頭部めがけて獣が躍り掛かる。



回避したバージンキラーの、今の今まで体があった場所が見事にえぐれていた。



「……! 頭ごと喰いつぶすとか狂犬かァ!?」


「嗚呼、良いですねそれ。
貴方も道連れにしてあげます」




街を焼く業火が視界を占める中、

黒煙に混じって何か、人型の影のようなものが幾つも––––……





「……援軍か」

目を細め、呟く。




「気の遠くなるような数っぽいですが、 相手になりましょう。

幹部への手土産として、その首切り落とします」




錫杖に絡みついた鎖が、菜穂子のそばに侍る獣を奮い立てるように地を叩きつける。






「お覚悟を」


「五十対一が、どれ程保つか見ものだナあっ!」





菜穂子が歯噛みした時、何処からか、何やら声が……






「––––菜穂子っ!」


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