第30章 Vermilion Bullet ……I
「……三島! 準備出来たか!?」
「嗚呼、いつでもいける」
三島と中也、与謝野女医が
市民体育館に程なく近い スクランブル交差点にて立ち止まった。
「んじゃ……ま、一気呵成にブッ叩くぞ!」
「怪我したら言いなァ、半殺しにしてから治してやるよ」
中也と与謝野女医が、三島を挟むように背を向け、
得物をそれぞれその手に握る。
中也は銃を、与謝野女医は鉈を。
「……三島!
手前ェが異能力を発動している間はきっちり守ってやるよ。
だから安心して夢の中に逝け」
「邪魔するやつらは 地獄送りとなるねェ」
中也がニッと笑う。
与謝野女医もケラケラと笑って鉈を振りかざした。
「……さ、これで何人のバージンキラーが来るかな」
「さァな……来なきゃいいッて問題でもねェしな」
スクランブル交差点のど真ん中。
中也と与謝野女医、三島だけが立っている。
辺りに静謐な空気が漂い始め、三島がすと息を吸った。
「……うつつに天降りし転輪府君よ––––」
ぞわりと身体中を何か、目に見えないものに撫でられるような感覚に襲われて総毛立つ。
これが首領が唯一友人だと口にした人物が見せる"畏怖"というものなのだと、あの花畑で微睡む紳士を見ていると知らしめる。
「昏き夢の水底へと堕ちよ」
【仮面の告白】––––……。
そう呟いた瞬間、突如として
まるで青空を具現化したかのように鮮やかな碧色の文字帯が、以前とは比べ物にならないくらいの大規模な半径で転写された。
水平点を通過して、中央から波がひし形に展開される。
まるで囁くように、歌うように 唱えられた言葉が
彼の指定した座標下を波のように広まってゆく。
「……さて、一気にどれくらい持っていけるかなぁ」
3人とバージンキラー
数に限りがあるのかないのか
三島が眠ったなら、これ以降は彼の指示なしで
すべてが進んでゆく。