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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第30章 Vermilion Bullet ……I





「…………」




頬に温い感触が伝う。


手の甲で拭えば、それは真っ赤だった。
久々に自分の血を見た気がした。



「……貴方が、いえ、バージンキラーが纏う殺気は
常人のそれとはまったく違います。

向き合えばすぐに判るでしょうね。

たとえ、誰に乗っ取っていたとしても」





「ヘェ〜……それで、どうすルんです?


この、この!

この姿の軍警を、貴方は殺せますかァ!?


何の罪もない、嗚呼でも、あるとしたら、乗っ取られたという憐憫の塊のこの姿のバージンキラーを殺せると言うんですかァ?」





赤の他人。


ああそう、まったくの赤の他人。



ましてや、バージンキラーが乗っ取っている軍警の男は、

彼に乗っ取られた事すら判らずに私に殺される。





「……殺せないでし……」


「殺せますね」




私は錫杖を振るう。


鎖が纏わり付き、耳障りな音を立てて引き戻る。



赤の他人。



殺しても罪悪感の湧かない相手として

絶好の状況。






「……正気ですかァ? 貴方は」


「ええ、とても。私は冷静です。なので––––」




がん!と錫杖と、バージンキラーの持つ

警察拳銃の銃把がぶつかり合った。



火花が赤い光を吹き飛ばして散る。






「幹部のお目汚しになる前に……この場でとっとと死んでください」



「やッてみなァ! ポートマフィアのお嬢さん!」






人知れずして……




獣遣いと異形の争いが



幕を開けることとなった……




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