第28章 La Vierge…II
「そうだね、例えば––––」
三島が嗚呼、と指を口元に当てる。
こんな動作がさまになる、三島は女性に好かれるように出来ている。
「……僕が自分の異能力の影響で脱落するという結果を、別の何かの"結果"で
無理やり因果を押さえつければ何とかなる。
と言うか、すべてうまくいく自信がある」
「……真綿みたいな事……言ってんじゃねェよ」
「––––ッ!」
三島の紺碧の瞳が、自分の無自覚のうちの一言に、
そして指摘されて初めて気付いたことに驚いていた。
は、と 彼にしてはとても珍しい嘲笑が漏れた。
「……ごめん、そうだね。でも、だとしても無理かな。
彼女の異能力は、自分の武器を抜く前に
対象に死亡結果を与えてから、遅れて殺戮、原因が来る……」
「嗚呼……結果 必ず死ぬ、だから特A級危険異能者なんだってな」
中也がそう言って、すっと手元に目線を移した。
自分の【汚れつちまつた悲しみに】は、確かに有能だが……
この街一つを覆ったところで、何になる。
頑張れば、この街に隕石が落ちたような地形に出来るだろう。
一瞬で たくさんの命が失われ、その中にはバージンキラーも含まれる。
味方も敵もお構いなしに……だが……
「死ぬことは先付けであって、殺戮に移行するまでのタイムラグは任意で変更可能だよ。
ただ……その時間内、彼女の捕捉人数は 一人だけ。
僕に時間を費やしている時にバージンキラーが出たら、彼女は動けない」
嗚呼、だったらもう––––
中也が手を握った。
黒革の手袋がギュ、と鳴る。
「あとは」
三島が指を一本立てて、ニッと笑う。
「治癒系 異能力者に、心あたりがある」